2006年 02月 02日
「笑う招き猫」 山本幸久 |
この小説は山本幸久さんが小説すばる新人賞を取ったデビュー作。
主人公はともに28歳の身長150センチでミニタンク体型の「アカコ」と、身長180センチとのっぽの「ヒトミ」の二人、物語は駆け出しの漫才コンビが初ライブでアガりまくって客に受けず失意の体験をするところから始まる。
漫才というと吉本かと思うが、二人は東京の小さな芸能事務所の所属で都内の小さなライブシアターが主な活動場所。
「アカコ」と「ヒトミ」の二人がバラエティ番組のおふざけ芸人ではなく、漫才師として一流のエンターテナーを目指すストーリに、二人を取り巻く人々のドラマを添えて話は展開してゆく。
根っからの天然娘かと思った「アカコ」が招きネコに込めた深い悲しみを持っていたり、コンビの存続にかかわる気持ちのすれ違いがあったりと、勢いがあってテンポのいいお話で飽きることのない展開だ。
のっぽの「ヒトミ」が、愛車レッドバロン号という自転車で世田谷から渋谷あたりを疾走する姿もほほえましくて元気をもらえる。
登場人物の誰もが、少し悲しみを持ちながらも誰かの事を思っていて、それでも毎日がんばって生きている姿に、なんとなく親近感を感じることの出来る作品だった。
青春まっただなかにいる人には、こんな日常があたりまえかもしれないけれども、青春を過ぎた(もしくは過ぎそうな)人にはこれを読むと元気が出るんじゃないかな?
本のデータ
書 名 :笑う招き猫
著 者 :山本幸久
出版社 :集英社 ; ISBN: 408774681X ; (2003/12)
購入場所:ブックオフ中野早稲田通店
購入日 :2006年1月3日
by todocci
| 2006-02-02 21:14
| 読書